心臓病

 ★ペットの長寿化により、心臓病なども増えてきています。

心臓病は一般的に高齢のペットで多いといわれていますが、フィラリア感染症や先天性奇形・心臓の弁膜症・心筋症または腫瘍など、原因も好発種や好発年齢も様々です。また右心の異常なのか左心の異常なのかで、症状も異なってきます。息切れや運動不耐性から始まり、咳や呼吸困難や重症化すると腹水がたまったり失神を起こすこともあります。

そういった臨床症状が現れるころには、病気がかなり重症化していることが多いものです。何かしら症状が見られたら早めに受診するのはもちろんですが、特に中年以降には定期的に健康診断を受け聴診などから早期に異常を検出することが必要です。
聴診など一般身体検査に始り、レントゲン検査や心電図検査、場合によっては超音波検査などの精密検査が必要となってきます。また、健康診断での血液検査で、心臓の特有ホルモン値を測定することで、その予兆をつかむ有効な方法となります。

 

 ★さまざまな心臓病

犬よ糸状虫症(いわゆるフィラリア症)
フィラリアが蚊の媒介で犬に感染し、半年ほどかけて成長しながら皮下組織から血管に入り、最終的に肺動脈や右心系に入り成虫となります。咳や呼吸困難、肝不全や腹水貯留などが起こります。

心臓弁膜症(三尖弁・僧帽弁)
心房室の間の弁が劣化して閉鎖不全を起こし、心臓内での血液の逆流を起こします。特に左心僧帽弁閉鎖不全では、軽度では運動不耐性や興奮時の発咳などが見られ、重篤になれば安静時でも発咳が見られ、肺水腫で呼吸困難や失神を起こし生命にかかわる状態になることもあります。心尖部聴診での雑音でGⅠ~Ⅳに区分され、心電図・レントゲンや心臓マーカーで検出します。好発犬としてキャバリアやマルチーズ・チワワなど小型犬があげられ、高齢で発症しやすい様です。

心筋症(拡張型・肥大型)
拡張型心筋症は心筋の収縮力が低下して心臓内腔が拡大したり心筋が肥大したりします。犬では大型犬に多発傾向があります。猫の肥大型心筋症では、心房拡大によりハート型のバレンタインハートと呼ばれる輪郭を呈することがあります。今場合、一般的な心不全の症状に加え、血栓塞栓症を起こして突然の後躯麻痺を起こすことが知られています。

その他の心臓病
珍しいもので、動脈管開存症・肺動脈狭窄症などの先天性心疾患(奇形)や心臓腫瘍、さまざまな不整脈などがあげられます。

 

 ★心臓病症例

《症例1》 

  

柴犬 14才 オス
重度心不全 心雑音3/4と心拡大像
たびたび肺水腫を起こすも、利尿剤・降圧剤にて現状維持

 

《症例2》

  

ボーダーコリー 12才 オス
心雑音3/4と心拡大像、会陰ヘルニア発症
ヘルニア修復手術後、利尿剤・降圧剤にて現状維持

 

《症例3》

   

猫, 13才 オス
完全尿路閉塞で救急来院、会陰部尿道瘻形成術施行後肺水腫を発症
点滴量を減らし、利尿剤・降圧剤・強心剤にて回復し現在も投薬中

 

《症例4》

  

シェルティー 10才 メス
呼吸困難にて来院。心臓性肺水腫の診断し、循環器専門病院を紹介し弁置換手術を受ける。現在内服薬を処方しつつも、症状安定。

 

《症例5》

 

チワワ 8才 オス
定期検診にて心雑音とANP値上昇を見る、内服薬処方するも漸次悪化。循環器専門病院にて弁置換手術を受ける。現在、処方薬なしで症状安定。

 

《症例6》

 

猫 13才 オス
肺水腫による呼吸困難で来院
いしている循環器専門病院にて心筋症の診断を受ける、定期検診受けつつも現在は内服薬で症状安定。